TARONASUでは9月7日より、ホンマタカシ「Looking through – Le Corbusier windows」を開催いたします。
ホンマタカシ| Takashi Homma
1962年東京生まれ。
1999年、写真集『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。
近年の主な展覧会に、2017年「La città narcisista. Milano e altre storie」(VIASATERNA、ミラノ)、2016年「VARIOUS SHAPED HOSES AND SNAKE」(Post、東京)、 2015年「Seeing itself – 見えないものを見る」太宰府アートプログラムvol.9 (太宰府天満宮、福岡)など。
古今東西、美術の歴史のなかでモチーフとして重要な役割を果たし、様々な意味を託されてきた窓。
カメラオブスキュラと窓との親密性や産業革命以降に発展した窓と近代社会の関係性など、「窓」の暗示するものはこれまでもホンマの作品世界に重要な構成要素として内包されてきた。
しかしル・コルビュジェ建築の窓を主題とした今回の展覧会について、ホンマタカシは「窓を撮りたかったわけではなくて」と言う。
近年、建築を主題とするシリーズを継続的に発表しているホンマとしては、自分が撮りたいように建築を撮るために窓を使ったのだと語る。
「普通に撮ると建築の写真は建築写真になってしまう。どうにかして建築写真ではない建築の写真を撮れないものかと考えた時に、窓を撮ってみようと思った。」
建築は建築家の思考の具現化であると当時にその思考の容器でもある。外から建築を覗き込む視線だけではその建築の本質に迫ることはできない。窓のうちから外へという視線にもまた、その建築空間の本質となる手がかりが潜んでいる。窓を通して眺める景色もまた、建築の内部のみならず外部をも規定する要素となるはずだ。
このように考えたホンマは、フレームとしての窓越しに眺める景色を通して、その窓がとりつけられた、しかし写真には写り込まない建築物の全貌を、抽象的かつ観念的なイメージとして捉えようとする。ホンマにとって、ル・コルビュジェ建築の窓から眺めた景色を撮影することは、偉大な建築家の視線を追体験し、彼の建築の内部に思いをめぐらせることであった。
そのとき、ル・コルビュジェ建築は「構造物に関する情報伝達」という建築写真の桎梏から解放されたイメージとなり、ホンマの視線が切り取った世界の断片として、鑑賞者の眼前に立ち現れるのである。
* 本展覧会の開催にあたっては出品作品の一部について一般財団法人窓研究所のご支援のもと制作されました。