"Art d’Ameublement (Onimo)" 2022
"New Humans II" 2022
"Negative Entropy (Seishoji, Afternoon Bell, Blue Rust, Hex)" 2022
"Art d’Ameublement (Kurima)" 2022
"Anima 27" 2022
Photo by Charles Benton, Yasushi Ichikawa

TARO NASUでは2022年5月24日より、田島美加「Spectral」を開催いたします。

田島美加|Mika Tajima
1975年 ロサンゼルス生まれ。
現在はニューヨークにて制作活動中。
彫刻、建築、音楽、パフォーマンスなど多様な要素を組み合わせた作品で知られる。
日本では2013年に「六本木クロッシング2013 : アウト・オブ・ダウト」展に参加、モダニズム建築の巨匠コルビジェの作品を自身の作品と組み合わせたインスタレーション等で高い評価を得る。

その他の主要な参加展覧会に、2022年「太宰府天満宮アートプログラム vol.11田島美加 Appear」(太宰府天満宮、福岡)、「Worlds of Networks」(ポンピドゥセンター、パリ)2019年「岡山芸術交流2019:もし蛇が」(岡山)、2018年「Programmed: Rules, Codes, and Choreographies in Art, 1965–2018」(ホイットニー美術館、ニューヨーク)、2017年「All Watched Over by Machines of Loving Grace」(Palais de Tokyo、パリ)、2011年「Pineapples and Pyramids」(アスペン美術館、アスペン)、「After the Martini Shot(シアトル美術館、シアトル) 2010年「The Double」(バス美術館、マイアミ)、2009年「Today is Not a Dress Rehearsal with Charles Atlas and New Humans(サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ) など。

「Spectral (スペクトラル)」と題された田島美加の個展は、TARO NASUでは約4年振りの個展である。

「Spectral (スペクトラル)」は幽霊のような、という意味とともに、光学・物理学の用語として、分光器を通して眺める虹のような光の分布図を示すこともあれば、元素や原子を対象物とする特定の分布図を示すこともある、という多義的な言葉である。日本において「スペクトラル」ではなく「スペクトル」と発音されるのは、フランス語の「spectre」に由来するからだという。
原義だけでなく、その翻訳語の成立過程も多様なこの言葉は、田島の新作の本質を伝える重要なキーワードなのである。
今回、展示されるのは、ジャカード織のペインティング「Negative Entropy」シリーズとアクリル板に着彩した「Art d’Ameublement」シリーズという田島の代表的な二つのシリーズに加え、新しい試みであるガラスの立体作品「Anima」シリーズ、そして2019年の岡山芸術交流で発表した「動く立体」ともいえる「New Humans」となる。
色彩の刺激がよびさます感情を扱う「Art d’Ameublement」や、呼吸という可視化できない対象を造形化した「Anima」はいずれも鑑賞者の見る角度や展示室内の光によって大きくその表情を変える、つかみどころのない存在であり、まさにスペクトラルの魅力を存分にたたえている。
また黒い磁性流体がアルゴリズムによって動き続ける「New Humans」は新種の生命体を実験用のシャーレのなかで覗き込むような不思議な視覚体験を提示する。これらの、時にかすかな、しかしたゆむことなくうつろい続けるイメージは、物体ではなく現象としてのアートにより強い関心を寄せる田島の作品世界の特徴を示すものであり、彼女の今後の展開を予見させるものとしても注目に値するものとなろう。

協力:株式会社 フェローテックマテリアルテクノロジーズ
今回の個展に際してご助力ご支援を賜りました株式会社 フェローテックマテリアルテクノロジーズ関係者の皆様に、この場を借りて改めて厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。