“Just be”
“By physical or cognitive means (Broken Window Theory 13 May)”
“Just be”
"Logic murders magic", "Spending time going backwards"
Photo by Keizo Kioku

TARO NASUでは2022年7月9日より、ライアン・ガンダー「Killing Time」を開催いたします。

ライアン・ガンダー|Ryan Gander
1976年イギリス、チェスター生まれ。
現在はロンドン、サフォークにて制作活動。

2021年に「Ouverture」(ブルス・ドゥ・コメルス、パリ)、2012年「ドクメンタ(13)」、「第9回上海ビエンナーレ」、2011年に「第54回ヴェネチアビエンナーレ」などの世界的に有名な国際展に多数参加。「ドクメンタ(13)」では、メイン会場の一つであったフリデリチアヌム美術館一階のメイン展示室にて、何も展示されていない 展示室のなかを吹き抜ける「風」を作品としたインスタレーションを発表し注目を集めた。
近年の主な展覧会に、2021年「コルトレイクトリエンナーレ Paradise: Do we want a better world」 (コルトレイク)、2019年「One artist / two films / one week」(ポンピドゥセンター、パリ)、2018年「シドニービエンナーレ」(シドニー)、2017年「この翼は飛ぶためのものではない」(国立国際美術館、大阪)、2016年「岡山芸術交流2016:開発」(岡山)が挙げられる。なお、2022年7月16日より「われらの時代のサイン」(東京オペラシティ アートギャラリー、東京)が開催される。

 

わたしが若い頃、困難な状況に直面したときに父がかけてくれた言葉は「世界にひと回りさせておけ」というものだった。年を重ね、それが〈いったん休め〉という意味だったのだと気づいた。決断するのではなく、24時間、地球が一回転するあいだ待つ。そうすれば見方が変わり、他者をおもんぱかる余地ができる。また父は「時間は最大の財産だ」とも、わたしにたびたび言い聞かせた。つまり、時間を最大限有効に使い、その価値を認識してむだにはするな、そうすることで〈行動〉を起こし、自らの主体性を活かすことができるのだと伝えたかったのではないか。主体性とは、だれもがしきりに権利を主張するのに、たいていの人は浪費してしまうものだ。これらふたつの父の言葉は、もちろん、やや矛盾している。硬貨の両面のように。

価値の定義について考えるとき、以前ならお金のことが頭に浮かんだ。加速する資本主義の現実のなかでわれわれは皆暮らしており、逃れようがない。しかし、問題を理性的に考えてみれば、時間や、心をそそぐことのほうが当然、はるかに価値がある。お金は、われわれ自身の主体性や、変化のきっかけが延々とつづいて成りたつ人生に先んじては存在していない。これまで出会った数多くの人が、硬貨に対して、理屈を超えたプラスアルファの価値を見いだしていた。ねじ回しの代用、センチメンタルな思い出の品、記憶のよすが、縁起かつぎの記念品、珍しいコレクターアイテム、ものごとを決めるために表が出るか裏が出るか……または〈行動〉か〈いったん休め〉かと投げる道具。

テキスト ライアン・ガンダー

 

関連展覧会「われらの時代のサイン」
東京オペラシティアートギャラリー
2022年7月16日 (土)- 2022年9月19日 (月・祝)
11:00-19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月7日[日・全館休館日]