12月のTARO NASU はライアン・ガンダーとジョナサン・モンクの二人展を開催いたします。
イギリスに生まれたガンダーとモンクは、世代は異なりながらも、ともにコンセプチュアル・アートの第一線で活躍してきました。彼らの作品は近現代の美術史のコンテクストを積極的に取り入れながら、イギリス人らしい独特のドライなユーモアをたたえています。
今回が日 本で初めての展覧会となるモンクの新作と、ガンダーの新作にて構成される本展覧会をご高覧いただければ幸いです。
ジョナサン・モンク
1969年イギリス、レスター生まれ。現在はベルリンにて制作活動。
1988年レスター・ポリテクニック(現デュ・モントフォート大学)卒業、1991年グラスゴー美術大学卒業。
近年 Casey Kaplan(ニューヨーク)、Yvon Lambert(パリ)などで個展を開催。
「1987年に美術大学に入学したときから、僕は模倣という手法を制作に取り入れ続けている。その当時に(そして今でも)『完全なオリジナル』をつくることは、ほぼ不可能だということに気がついたんだ。だから僕は既に世の中に発表されている作品を、自分の作品の素材 として扱ってきた。それでも元になった作品とは完全に異なる、僕だけのオリジナルな作品をつくり出してきたと自負している。僕はずっと、アートというのは即ちアイディアそのものだと考えてきたし、当然のことながらオリジナルと、その模倣から生まれたものというのは、それぞれに独立した、まったく異なるものなんだ。」 ジョナサン・モンク(2009年)
2009年の個展で、モンクはジェフ・クーンズの代表作であるウサギ型風船の金属彫刻を「空気の抜けた」状態にした彫刻のシリーズ 《Deflated Sculpture》(しぼんだ彫刻)を発表。過去にもソル・ルウィット、エド・ルシェ、ブルース・ナウマン、ヴィト・アコンチなど、モンク は近現代美術史上の作品を題材にした作品を発表しています。一つの解として既に発表されたアイディアを軽やかな手つきで解きほぐすことで、モンクはオリジナルとは異なる新たな解釈を紡ぎだし、自身の作品として提示します。
本展覧会ではギャラリーの開廊時間を示したネオン管作品《Gallery Hours》、日本の国旗をモチーフにした新作インスタレーション 《One hundred and one alternatives to red》、マルセル・デュシャンの墓碑銘「死ぬのはいつも他人ばかり」を引用した彫刻作品 《Many Others》シリーズの新作など、5つのシリーズから作品を展示いたします。
ライアン・ガンダー
1976 年イギリス、チェスター生まれ。現在はロンドンにて制作活動。
ガンダーは新しい時代のコンセプチュアル・アートの旗手として、イギリス国内のみならず世界のアートシーンで注目を集めてきました。今年開催された「ドクメンタ(13)」では、メイン会場の一つであったフリデチアヌム美術館一階のメイン展示室にて、何も展示されていない展示室のなかを吹き抜ける「風」を作品としたインスタレーションを発表し、大きな話題となりました。
ガンダーの作品は純粋芸術としてのアートと、デザイン、建築、ポップカルチャー等が織りなす重層的なタペストリーのような構造をもちながら、世界を読み解くための「考えるための装置」として、いつしか見る人を普遍的かつ抽象的な思考の冒険に誘い込んでいきます。
本展覧会ではガンダーが近年取り組んでいる彫刻作品シリーズを中心に、4つのシリーズから新作を展示いたします。自身の愛娘が幽霊のフリをして遊んでいる様子をモチーフにした大理石の彫刻《Tell my mother not to worry》のほか、出会うはずのない物同士が組み合わされた木彫作品《The way things collide》、ガンダーの初期の代表作《Associative Photographs》シリーズから派生した 《Associative Ghost Templates》などのシリーズの新作を展示いたします。