"ALPS 1996 #12" 2015
"IRAN 1998 #12" 2015
"ADX 18653" 2015
"SLL 17339" 2015
"LIM 134949" 2015

Photo by Keizo Kioku

11-12月のTARO NASUは松江泰治の個展を開催いたします。
TARO NASUでは2012年以来3年ぶりとなる本展では、世界の「墓地」を捉えた新シリーズ「LIM」に加え、90年代に撮影した黒白作品を新技法/サイズにて展開、発表します。

松江泰治 | Taiji Matsue
1963年東京生まれ。現在、東京にて制作活動。
1987年東京大学理学部地理学科卒業。
1996年第12回東川賞新人作家賞受賞。2002年第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2012年第28回東川賞国内作家賞受。2013年第25回「写真の会」賞授賞。
2006年「JP-22」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡)、2011年「アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち」(国立新美術館、東京)、2012年「世界・表層・時間」(IZU PHOTO MUSEUM 、静岡)、2014年「青森EARTH」(青森県立美術館、青森)、札幌国際芸術祭(札幌)、2015年「俯瞰の世界図」(広島市現代美術館、広島)ほか、2014年よりスイス、ポーランド、ドイツの3カ国を巡回したグループ展「Logical Emotion」(ハウス・コンストルクティヴ美術館/クラクフ現代美術館/ザクセンアンハルト州立美術館)など国内外の個展、グループ展、芸術祭等に多数参加。
また、東京国立近代美術館(東京)、国立国際美術館(大阪)、サンフランシスコ近代美術館(アメリカ)など国内外多数の美術館に作品収蔵。

松江泰治が今回発表する新シリーズ「LIM」は世界中の「墓地」をテーマとしている。
各地の文化や風習を色濃く反映した「墓地」という「風景」を、松江はこれまで同様、極力主観を排して細部にいたるまでの明晰さを意識しながら撮影した。
鑑賞者の、「イメージに込められた意味」を読み解こうとする試みを冷たく突き放すかのような松江の制作姿勢は、画面内に恣意的な主題や中心モチーフを置くことを忌避することにもあらわれている。
「墓地」をみつめる松江の視線は、これまで被写体としてきた砂漠や山、あるいは世界各国の都市に向けた視線となんら変わらない。死後の世界での住居としての墓地が示す「もうひとつの都市」の姿も、生のなかで死を想う行為も、松江にとっての主題ではない。そしてその変わらない視線にこそ、「地球の表面を採集する」という松江が長年続けてきた制作の意図、そして主観と客観の極限までの緊張関係を模索する姿勢が示されているのである。なお、本シリーズと同タイトルの作品集『LIM』が、2015年11月20日より青幻舎から出版される。

本展を構成するもう一つの柱は、90年代に松江が撮影した代表的な黒白作品を、新たな技法とサイズにて展開した作品群である。
アナログ時代、電子顕微鏡用引伸機でプリントしていた松江。今回、黒白フイルムのデジタル化により、以前には不可能だった拡大率での高解像度プリントを実現した。
テクノロジーの進化とともに常に変化していくことこそが、写真の面白さだと松江は言う。デジタル時代のなかで新技術とどう向き合うか?新技法を用いて90年代作品を新たに生まれ変わらせた本シリーズは、写真の可能性を模索し続ける松江が出した一つの解に他ならない。